店長のしごとにおいて大事なものの一つに時給評価があります。時給なので+10円、20円の世界で、月給に換算すると1000円~2000円てこともあります。しかし、甘く考えてはいけません!アルバイトさんにとっては超重要な指標だったりします。
ですから評価を間違うととんでもないトラブルになるし、最悪「辞めますっ!」なんてこともあります。
社員の人事考課ってセミナーや書籍などたくさん存在しますが、アルバイトさんの評価の仕方って、実はネットにもあまり知識が落ちていないんですね。
そこで今日はアルバイト総数300人の店舗の店長である私が実践している時給評価を解説したいと思います!
何のために時給評価をするのか?
アルバイトさんの努力や成果を認め、さらなる成長を促し、モチベーションを高めるため、です。
時給は数字であり、非常に分かりやすい指標です。店長や上長が思っているアルバイトさんへの評価を明確に伝えることが出来ます。
時給を通し、評価を伝え、来期更にモチベーション高く業務に取り組み成長してもらいます。またアルバイトさんにによっては、行動を見直し行動を変えてもらう機会にも出来ます。
こうして店にとって最適な人材を育成し、チームを作ることが時給評価の目的です。
どうやってアルバイトさんの時給を決めるか?
まず、何を評価して、何を評価しない、という内容を、事前に周知しておきます。
評価する内容例
- 期中に成長した(出来ないことが出来るようになった)
- 店の運営・営業全体に貢献した(レジへの応援・他部署フォロー・新人育成など)
- 繁忙日のシフト協力(土日・GW・お盆・年末年始)
評価しない内容例
- 店舗ルールを守らない(身だしなみ・勤怠・施設の使い方)
- 勤務シフトが安定しない(突発休み・提出後のシフト変更・遅刻早退)
- 繁忙日に出勤しない
という感じです。お店の特性によって変わると思いますが、評価項目を明確に示すことはとても大事です。
その上で、各セクションの上長を集め時給評価会議を開きます。
店長や副店長など一部の社員だけで決定することは絶対にしません。対象のアルバイトさんが働いている状況を一番良く知っている上長と共に決めます。
こうしないと「店長に全然会ったことないけど、どうやって時給決めてんの?」や「好き嫌いで決めてるだけでしょ」という声が必ず出てきます。対象人数が20人程度であれば店長一人で決めても納得してくれるかもしれませんが、それ以上の人数だと、相当日常の関わりで努力しないと無理でしょう。
アルバイトさん達が、自分のことをしっかり見てくれていると思っている社員が評価し、そして何を以て評価するのかを明確にすることが、時給評価する上での絶対条件です。
時給評価会議のポイント
セクションごとに分けて実施します。それぞれのセクションごとに業務が違いますし、アルバイトさんに求めることも違います。よってセクションごとにおいて評価をします。
ウチだと、①1階フロア②2階フロア③レジ④生鮮⑤後方事務の5つに分けます。(都合上、大セクションと呼びます)①でも100名以上いつので、そこからもう少しセクションを細分化します。アルバイトさん8~20名に対し1名責任者(社員、アルバイトさんの場合もあり)が付いているので、その社員の単位まで細分化します。(都合上、小セクションと呼びます)
セクションの中でも自分が特に関わりが濃い部署のアルバイトさんを評価してあげたくなるものです。また、社員の代わりが出来るような個の能力が高いアルバイトさんも評価しがちです。しかし、チームワークへ貢献し、他者への良い影響を与えることが出来ない人材は、いくら個の能力が優れていても評価することはしません。
小売業は個人戦ではなくチーム戦だからです。自分勝手に動いてしまい、チーム全体を強くするという行動が取れない人材は、マイナス面の方が大きいのです。こういう人材を評価してしまうと、その行動を承認したこととなり、今まで以上に好き勝手に振る舞ってしまうことになります。
時給評価会議の進め方
まず小セクションの責任者から店長へ、上述した評価する内容をもとに1人1人プレゼンテーションしてもらいます。
- 期中に成長した(出来ないことが出来るようになった)
- 店の運営・営業全体に貢献した(レジへの応援・他部署フォロー・新人育成など)
- 繁忙日のシフト協力(土日・GW・お盆・年末年始)
この内容ですね。
プレゼンの例ですが、こんな感じでアルバイトさん一人ひとり進めます。
「期中に一人で季節催事のコーナーを立ち上げ、陳列からディスプレイまで完結させられるようになりました。忙しい時は積極的にレジ対応やお客様からの問い合わせに動き、営業貢献度も高く、また新人さん1名を基礎業務マスターするところまで育成してくれました。土日は毎週出てくれていますし、繁忙期はシフトも融通を効かせてくれます。」
これはちょっと出来すぎな内容ですがw、何を持って時給を上げたいのかを、責任者から店長へ伝えさせるプロセスが非常に重要です。
そのあと、いくら時給を上げたいのかを伝えさせ、その上げ幅や上げた後の時給を見て、今度は大セクションで調整をします。
理由は2つあって、
1つ目は、大セクションにいる他アルバイトさん達と横並びで見て、そのアルバイトさんと同スキルの方と大きな乖離がないか、を調整するためです。
2つ目は、大セクション内の他セクションから見たアルバイトさんの評判の確認です。小売業はチーム戦です。そのチームとは少セクションではなく、店全体を意味します。よって自セクションが良ければ良いや、のような行動をしてしまっていないかを必ず大セクション内の他責任者にも確認し、チームのことを考え行動出来ているかを判断します。
大セクション内でも業務や求められる業務に若干の違いはあるのですが、このすり合わせ調整を行う必要があります。誰でも自分が毎日近くで仕事している部下のことは評価したくなるもので、客観的目線は意識していても失われていきます。
よって、その責任者に客観的な目線を持ってもらい、評価の公平性を一定担保してもらうために重要な段取りです。
細かい評価項目に応じた評価の落とし穴
お店によっては評価項目が100項目などあり、それに応じて評価をしているところも多いと思います。それはそれでフェアで良いのですが、きちんとその評価項目の内容を確認してください。完全に個人戦でOKな業態であれば良いですが、小売業は基本チーム戦です。よって、業績や能力だけでなく、コミュニケーションや行動、モラルに項目が無いと良いチームは作れません。
また、能力と行動は、足し算ではなく掛け算の関係です。他アルバイトさんを退職させてしまう方は、どんなに個のスキルが高くても、チームにとってはマイナスです。これは足し算であると、どんなに行動評価が悪く、モラルがなくても、プラス評価となってしまい、最終的にチームに悪影響を及ぼします。
こういう方に、このままで良いと思ってもらわないように、きちんと行動評価を用いて評価を行い、改善を促していく必要があります。
よって、評価項目の結果そのままに評価する際には、その評価項目のバランスと、採点手段が足し算か掛け算かを良く確認する必要があります。
まとめ
時給を上げたからと言って、アルバイトさんがそれだけで満足するわけでもモチベーションを上げてくれるわけでもありません。大事なのは、どうして時給を上げたか、何を評価したかをしっかり伝え承認してあげることです。
アルバイトさんの給料は時給のみであり、ほとんどの場合ボーナスは無く、あったとしても社員のように何ヶ月分などの支給はありません。さらに、新人Aさんと勤務20年の大ベテランで超絶ハイスキルのBさんとであっても、AさんとBさんとで時給が2倍3倍と差があるわけでもありません。
当然、Bさんのような方たちもアルバイトである以上、待遇に限界があることは分かっています。
ですから、アルバイトさんには、評価だけでなく、必ず感謝もいっぱい伝えてください。それを当たり前と思わず、とにかく日頃の感謝を言葉にして伝えてください。
評価も感謝も、常日頃からアルバイトさん一人ひとりを観察し、そして観察していることを相手が理解してくれていない限り伝えることは出来ません。
評価と感謝、この2つがきちんと伝わって、初めて時給が上がったことに価値が生まれるのです。
時給評価を形式的なものやトラブルの基と捉えて消極的にしてしまう店長も多いですが、しっかり時給評価の機会を有効に使えば、チームは間違いなく強くなります!
《補足》「他言無用」と伝えること
評価内容を明確にしているから、隠す必要ない、むしろ隠さず開示したほうが良いという意見もありますが、それは全員が同じ環境で業務をしている場合です。労働時間も違えば求めている業務内容も違う、接客・後方など属性や職種は多種多様です。これら全ての職種の貢献値や価値を知っているのは店長だけ。アルバイトさんにはまず理解ができません。
ですので、評価時給が漏れてしまうと必ずトラブルが発生します。「あの仕事であの時給もらえるんだって」「あの人が上がって私は上がらなかった」などの声が上がってしまいます。
それぞれの職種や業務にそれぞれの価値がある、と伝えても、人数が多い職場ではその意味が理解できず、時給開示はトラブルに間違いなく発展するでしょう。
絶対に他言しないこと!これはしっかり念を押して伝えることをおすすめします。
以上!
それでは~
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