小売社員の悩みを聞いていると、
- 「言うことを聞いてくれないスタッフがいて困っている」
- 「話した内容と違う内容で伝わってしまう」
- 「当たり前のことを注意したら辞めてしまった」
こういう悩みを抱えている方が非常に多いです。今は悩んでいなくても、過去一度はこうした経験をしたことがある方も多いと思います。
原因は簡単で、あなたの信頼貯金が不足しているからです。貯金が無かったらお金を下ろせないように、信頼していない相手のいうことなど、誰も聞こうとしません。
よって信頼貯金を貯めることが出来れば、この悩みは解決します。
今回は、小売社員にとって、そして相手を動かす際に非常に大切な、信頼貯金について解説していきます。
信頼貯金ってなに?
信頼貯金というコトバ、これは造語です。ただ、これ、初耳ではなく、聞いたことある、似てる言葉知ってるって方いますか??
実はこれ、七つの習慣(スティーブン・R・コヴィー)という世界的有名なベストセラーである書籍から引用しているコトバで、七つの習慣では信頼残高という言葉で訳されています。
この考え方が、たくさんの人を扱う小売業、そして忙しく、かつ様々なコトを処理し、たくさんの人と接する現場において、非常に役に立ち、かつ、分かりやすい考え方です。
そもそも信頼貯金とは何なのか?
シンプルに相手との信頼の量です。信頼は目に見えるものではありませんが、お金と同様、増えたり減ったりします。そのため分かり易く貯金というコトバを使用させていただきます。
そしてこの信頼貯金がある場合と無い場合だと、コミュニケーションに大きな差が生まれます。
また、日常の小さな言動、心がけ一つ、判断一つで増えていくこともあれば、減ってしまうこともある、と、まずは理解してください。
それではまず、貯金残高がある場合とない場合でコミュニケーションがどう変わるか、について簡単に説明していきます。
リーダーの信頼貯金が多い場合と少ない場合とでは、相手の反応は大きく変わる
リーダーの信頼貯金が多い場合はどんな状態か?
相手がリーダーのことを信頼してくれていて、リーダーから信頼しているということが相手にきちんと伝わっている状態。信頼関係が構築されている状態、と、理解してください。
この場合だと、リーダーの言動がきちんと伝わります。本人のためにと思ってやったこと、言ったことが、こちらの意図した通り、そのまま相手に伝わります。
安心して仕事を任せることが出来ますね。
そして、悩んでいることや、やりたいことなども直接話してくれるので、話が早いです。
人が退職した、急なキャンペーンの対応、こうしたイレギュラー時にもきちんと向き合ってくれます。
リーダーの信頼貯金が少ない場合はどんな状態か?
相手がリーダーのことを信頼していませんから、何を話しても疑心暗鬼です。言動がネガティブに伝わります。些細な事、相手のためを思ってやったことも、全て否定的に受け取られてしまいます。
また、裏があるんじゃないか?自分だけ不利益なんじゃないか?
こうしたことを考えられてしまう、全く信頼関係が構築されていない状態、と理解してください。
相手の悩みは直接聞こえてこず、小さな問題が気付くと大きくなっていたり、何か突発的に問題が起きた時に、私は関係ない、と向き合ってくれなくなります。
小売業は多人数で行うチーム戦ですから、これをチームでみてみましょう。
リーダーの信頼貯金が多いチーム
- 指示が正確(ポジティブ)に伝わる
- 協力体制が生まれる
- 人が辞めないため継続成長していく
リーダーの信頼貯金が少ないチーム
- 指示が曖昧(ネガティブ)に伝わる
- スタッフ同士で足の引っ張り合いが生まれる
- 人が常に入れ替わり、チームとして成長しない
一目瞭然ですね。スタッフの能力は一緒でも、仕事の結果に大きな影響を及ぼします。
信頼貯金の貯め方
では、どうすれば貯金をためられて、成長出来るチームが作れるのでしょうか?やるべきことは簡単です。
- 感謝をコトバで伝える
- 相手の話を最後まで、全部聞く
- 失敗した時、隠したりごまかしたりせず、正直に認めて謝る
簡単ですよね!ただ、これが出来ていないリーダーは本当に多いです。
具体的な例も交えて解説します。
感謝をコトバで伝える
一番はコレです。「ありがとう」「助かりました」こうしたコトバをきちんと相手に言えているか?伝えることが出来ているか?
これが何よりも大切です。
私は、スタッフが上がる時、「お疲れ様でした」ではなく「ありがとうございました」と伝えるように心がけています。
どうして「ありがとうございました」と言うのかというと、今日も一日仕事をしてくれた感謝を伝えたいからです。
私がレジを打っていた時の経験ですが、たまにレジを打ってお金を頂戴する作業だけなのに、「ありがとうございます」と言ってくれるお客様がいたのです。
私としては通常の業務をこなしているだけであったのに、「ありがとう」と感謝のコトバを言われて、凄く嬉しかったことを覚えています。
上がり際に「ありがとう」というコトバをもらったら、スタッフはきっと、「感謝された」「必要とされてる」と喜び、あなたのために働こうと思ってくれるはずです。
これはとても簡単で直ぐ実践でき、しかも貯金がぐいぐい貯まります。
相手の話を最後まで、全部聞く
スタッフは、自分の話を聞いてくれる人、理解した上で意見をくれる人、こういうリーダーを信頼します。
リーダーが忙しいことは、実はみんな理解しています。「自分に貴重な時間を使ってくれている!」スタッフはこう思うのです。また、自分に自信を持っていないスタッフや、普段リーダーと距離を感じているスタッフほど、話を聞いてもらったという経験を持っていないため、より効果があります。
ですからリーダーは、きちんとスタッフの話を最後まで、全部聞く、この行為だけで信頼貯金を貯めることが出来るのです。
失敗した時、間違えた時、隠したりごまかしたりせず、正直に認めて謝る
これは意外、と思う人もいると思います。
そうです、失敗=マイナスではないんです。
失敗してしまったとき、きちんと認めて謝れば、貯金は貯まります。
リーダーが失敗することももちろんあります。熟慮したつもりでも間違えることはあります。そもそも人間はミスする生きものであり、忘れ物をしたことのない人間はいません。
失敗しても、仕事を続けなければならないのです。
間違いを認めて信頼が下がると思うのではなく、その間違いに対するスタッフの心情に寄り添ってください。
リーダーが間違えていたとしても、そこから仕事は続きます。なんならスタッフがリカバリーすることもあります。そのスタッフがこのあと、気持ちよく仕事が出来るためには、間違い即座に認め、誤ってくれた方が良いに決まっています。
誠実な対応をしてくれた、という印象も残ります。
また、スタッフ自身も、リーダーも間違うんだから、万一自分たちが間違っても大丈夫。と安心して仕事の望んでくれるようになるでしょう。
信頼貯金が減る時
では、次は信頼貯金が減るときを解説します。貯金と同じで、増えるときも減るときもあります。増えるときはゆっくりで時間がかかりますが、減る時は一瞬です。
相手の話を聞かない
これが一番減ります。信頼貯金が減る金額が一番多く、際限なく減り続ける行為です。なんなら借金も出来ます。
相手の話を遮る行為も相手の話を聞かないと同義です。ですので、相手と業務上の話をする時は必ず最後まで、相手が十分話したと思えるまで話を聞いてください。
リーダーとスタッフでは、立場に差があります。スタッフにとって、リーダーと話す機会は貴重で特別なのです。その時に満足に話を聞いてあげていないと、スタッフはリーダーに無視されたと受け止められることも少なくありません。
無視とは、相手の存在を否定する行為ですから、信頼構築とは対極にある行為です。
話を遮ることなく、聞く時は必ず最後まで、全部聞くようにしてください。
どうしても時間が取れないのであれば、いつなら時間が取れるのかを明確に相手に伝えましょう
小さな約束を守らない
○○やっておく、○○さんに伝えておく、後で、など、小さな約束を反故にしていませんか?
たくさんの業務を抱えるリーダーにとっては小さな約束かもしれませんが、スタッフにとってはそれだけで状況が大きく変わる、とても大切な約束かもしれません。
約束の大小は、自分の立場で考えてはいけません。必ず相手の立場で考えてあげなければならないのです。
そもそもリーダーを頼っているから相手はお願いや約束をしてくるわけであって、やるといったことをやらないことは、どんなに些細なことであれ、破っていることに変わりはないのです。
日常にある些細な約束ほど大事で、スタッフは必ず覚えています。
しかし、リーダーにとっては小さな約束であろうことは、スタッフも分かっています。それをしっかり守ってきちんと約束を果たしてくれたらどうでしょうか?
こんな小さな口約束覚えていてくれたんだ!となり、信頼は倍増するはずです。
リーダーにとって小さいと思ってしまう約束ほど、実は信頼貯金を貯める上で大きな効果があるかもしれないのです。
ただ、注意をする
注意=信頼貯金を引き出す行為です。
なぜなら相手を注意することは、相手は少なからず自分を否定されたと受け取るからです。自分を否定してくる相手への信頼は、よほどの信頼関係が出来ていない限り、一時的にとはいえ必ず下がります。
ただし、相手の仕事の間違いを正さなければならない場合や、遅刻や中傷などで注意をしなければならない時もあります。
その時は、必ず最初に相手の話を聞いてください。
どんな状況であっても、ダメなものはダメと結論を決めつけずに相手の話を聞くことです。
スタッフは間違っていたけど、考えはあったし都合もあったはずです。もしかしたら想像も出来ないような状況があったかもしれません。
まずスタッフの話をきちんと聞いた上で、「○○さんの事情は分かりました。当時の状況も理解できます。しかしその結果、チームにとっては不都合が発生してしまいました。では、次同じ状況が起きたら、どうすればよいでしょうか?一緒に考えましょう」
このような流れで注意が出来れば、相手は否定されたと感じず、信頼貯金の現象は最小限に済むでしょう。もしかしたら、「失敗したのにきちんと話を聞いてくれて寄り添って対応してくれた」となり、逆に信頼貯金が増えることにつながるかもしれません。
信頼貯金を貯めることを意識すると日常の行動が変わる
最信頼貯金を貯めることを意識の置いて行動すると、日常のあらゆる状況が今までと違って見えてきます。
- トラブルをめんどくさいと思わずチャンスと捉えることが出来る
- スタッフがどうしたら喜ぶか、考えるようになる。
信頼貯金も、お金の貯金と同じで、主体は全て自分にあります。自分が貯め無い限り、貯金は増えていきません。だれかが勝手にお金を振り込んでくれることなんで絶対にありません。
もう一度言います。
貯金の主体は全てリーダーである自分にあるのです。
よって、信頼貯金を意識すると、あの人はモノ分かりが悪い、モチベーションが低いからだ、などの理由でコミュニケーションの問題を相手に押し付けることが無くなります。
相手が言う事を聞いてくれない、言動がうまく伝わらないのは、単純に自分の日常における信頼貯金が足りていないのです。
もちろん、日々たくさんのスタッフと接するリーダーにとっては、すべてをこうして信頼貯金と結びつけて考えることは難しいかもしれません。
ただし、相手を変えるよりも、自分の意識を変える方が現実的です。そしてスタッフとの信頼関係無くして我々小売の仕事がうまく行くことは絶対にありません。
信頼関係を築くためには、コミュニケーションの問題を相手のせいにする行為は絶対に行ってはいけないのです。
先行きが見えなく、一層苦しくなるだけです。
ぜひ、この信頼貯金という考え方を自身の今のチームに置き換え、今後の仕事やチーム作りに活かしてくれればと思います。
以上、
それでは~
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